2017年2月4日(土)東京医科歯科大学歯学部特別講堂にて、平成28年度産業歯科保健部会後期研修会が関東産業歯科保健部会研修会との合同で開催されました。今回は、シンポジウム「職域における歯科口腔保健の課題と今後の展望」〜厚生労働省 労災疾病臨床研究の結果から〜 として、北海道、新潟、岡山、埼玉、千葉など各地から、産業歯科保健活動や研究班の関係者が集まって講演が行われ、活発な質疑応答も行われました。参加者は61名でした。
座長の川口陽子先生(東京医科歯科大学、研究代表者)および加藤 元先生(日本アイ・ビー・エム、産業歯科保健部会 部会長)から、平成26年6月18日に衆議院の厚生労働委員会において、労働安全衛生法の一部を改正する法律案に対する附帯決議が行われ、その中で、労働者の口腔の健康を保持することの重要性が謳われ、職域における歯科保健対策について検討を行うことの必要性が示されたこと、またこの附帯決議を受け、今回、厚生労働省による労災疾病臨床研究として、平成26〜28年度に「歯科口腔保健と作業関連疾患との関連に関する実証研究」が行われたことが説明されました。
続いて、実施された研究結果について講演がありました。深井穫博先生(深井保健科学研究所)は、職場における「日本歯科医師会版新しい成人歯科健診・保健指導プログラム(通称:生活歯援プログラム)」の実施と効果について講演され、金子 昇先生(新潟大学)は、「職域における歯科健診と保健指導による行動変容」として、健診で好ましい口腔保健行動への改善傾向が認められ、さらに保健指導を行うと口腔保健行動の改善と持続が認められたと報告されました。森田 学先生(岡山大学)は「職業階層・勤務形態と歯周疾患との関連」で、歯科保健指導にも職業階層や勤務形態の違いへの配慮が必要ではないかと話され、佐藤眞一先生(千葉県衛生研究所)、山倉久史先生(千葉県歯科医師会)は「千葉県内事業所における実証研究の成果と今後の展開」として実証研究実施の際の具体的な方法や内容を提示されて講演されました。最後に財津 崇先生(東京医科歯科大学)が「職域における歯科口腔保健に関する実証研究の成果」として、歯科健診結果と全身の健康状態のデータ分析から、労働者への歯科保健対策の必要性を訴えられました。また一年後の結果との比較から、口腔保健行動は、歯科健診、さらに保健指導を行うことで改善したが、口腔保健状態(健診結果)にはほとんど改善が認められなかったことから、継続が重要ではないかと話されました。講演後は、職域における歯科口腔保健の課題と今後の展望について、活発なディスカッションがなされ、後期研修会が終了しました。
文責:森 智惠子
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