平成28年5月24日(火)〜27日(金)に第89回日本産業衛生学会が福島県文化センターおよび福島市音楽堂・福島市勤労青少年ホーム・福島市働く婦人の家にて開催され産業歯科保健部会の平成28年度前期研修会を5月26日(木)に開催しました。
テーマは「歯科医療職のストレスマネージメント」で、参加者は32名でした。
【研修会 内容】
座長:尾崎 哲則(日本大学歯学部 医療人間科学教室)
演題名:「ストレスを切り口に考えてみませんか、歯科医師の心と体の健康
〜歯科診療所アンケートから〜」
演 者:高津 茂樹(日本歯科医療管理学会顧問、高津歯科医院)
昨年12月の労働安全衛生法の改正に伴い、すべての労働者に対して、「ストレスチェックが義務付けされました」が、歯科医療の現場ではどのようになっているのでしょうか。
歯科医療は細かな操作が多く、また患者さんの様々な要望と対峙し、対応もかなりストレスフルといわれています。しかし、歯科医療施設は、小規模なものがほとんどであり、ストレス対応そのものがなされていない状況です。
そこで、今回の研修会では、元日本歯科医師会常務理事で、長く日本歯科医療管理学会の会長を務められた高津茂樹先生をお招きして、歯科診療所での歯科医師のストレス状況のアンケート調査について結果のみならず、先生の経験からの講評も頂きました。それをもとにして、歯科医療現場における今後の歯科医療従事者のストレス対応について考えていくことができました。
以下に演者の事後抄録を掲載致します.
文責: 尾ア 哲則
歯科医療現場でみられるストレスのつきあい方
〜対応と支援から成長へ〜
高津歯科医院 高津茂樹
2015(平成27)年12月1日から、従業員が50人以上の事業所に年1回「ストレスチェク」の実施が義務づけられた。しかし、ほとんどの歯科診療所では、従業員が50人以下であるので、努力義務とされている。
そこで、まず歯科診療所の歯科医師が、現場のストレスをどのように感じ、対処しているか現状をみた。歯科診療所における歯科医師のストレス調査票、及び厚労省が推奨する職業性ストレス簡易調査票を用いた。
調査票は少数(N=25)であったが、日本歯科医療管理学会会員にお願いした。
ここでは、歯科医師のストレス調査から興味ある点を紹介したい。
1.歯科診療所における歯科医師のストレス調査から
1.歯科医師は歯科診療所でのストレスをどうみているか
・87%は、社会のなかで歯科診療所でのストレスは多い職場と思っている
・92%は、ストレスに関心がある
・80%は、歯科診療所でのストレスが適当にあったほうがいいと思っている
・92%は、悪いストレスと良いスストレスがあると思っている
・64%は、レジリエンスという言葉は聞いたことがない
・52%は、平成27年12月からストレスチェック制度が始まったことを知らない
2.歯科診療所の歯科医師とストレス
・100%が、最近1か月の間にストレスを感じており、そのなかで2%の人は
心と体に異変があった。
・52%は、 開業後本日までの間に、ストレスのため心や体に異変を起こしている。
そのなかで8%の人は異変が続いている
・48%は、ストレスに強いと思っている
・38%は、ストレスに弱いと思っている
3.歯科診療所のストレス発生要因
・50%は、ヒヤリハット
・52%は、患者・家族とのコミュニケーション
・44%は、低い保険診療の技術評価
歯科衛生士の求人関連
・40%は、従業員とのコミュニケーション
診療所外からもち込まれた歯科医師会のこと
4.ストレスを感じたときの対処方法
・60%は、運動、ストレッチ、趣味、飲酒などの気分転換、プラス思考で切
り替える
・52%は、状況の解決・改善のために積極的に対処する
・32%は、実務面で、他者からどう対処するか助言を受け支援してもらう
・24%は、情緒面で、他者からの慰めや理解を得て心の支えとする
ここでは、歯科診療所の歯科医師がストレスをどのように感じ、対処しているか紹介した。今後は歯科医療従事者が、ストレスに関心を高め、ストレスに強い医療現場をつくる。そのためにも心も体も健康で、働きやすい歯科診療所の環境づくりをしないといけない。キーワードはレジリエンス、キーフレーズはハーデイネスと呼ばれるレジリエンスを高める姿勢と心をもつことである。
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