第83回日本産業衛生学会 産業歯科保健フォーラム
報告
テーマ「職域における口腔保健と公衆栄養」
2010年5月26日に福井県のフェニックス・プラザで行われた第83日本産業衛生学会において、産業歯科保健部会が主催する産業歯科保健フォーラムが開催され、100名を超える参加者がありました。
今回のフォーラムのねらいは、いままでそれぞれの視点で研究や実践がなされていた歯科保健と公衆栄養を、同じ土俵で論じ、新しい知見をもたらすことでした。
座長の曽山善之先生(金沢医科大学)、柳澤裕之先生(東京慈恵会医科大学)による司会・進行のもと、産業医、管理栄養士、歯科医師といったそれぞれの立場からシンポジウムの形式をとってご講演いただき、指定発言のあと、全体討論を行いました。
三浦克之先生(滋賀医科大学 社会医学講座公衆衛生学部門)のご講演「日本人における栄養と循環器疾患の疫学および対策」では、循環器疾患と栄養に関する話題について、栄養と血圧に関する国際共同研究のINTERMAPや循環器疾患基礎調査対象者の長期追跡コホート研究であるNIPPON DATA80/90の結果を踏まえ、職域における生活習慣病予防のために開発したポピュレーション手法の大規模介入研究(HIPOP-OHP)の結果を解説いただきました。
由田克士先生(大阪市立大学大学院・生活科学研究科)のご講演「国民健康・栄養調査から見た口腔保健と栄養摂取・食生活の関連」では、国民健康・栄養調査結果より、口腔保健の現状、喫煙と口腔状態・食物摂取、歯の本数と口腔状態・食物摂取について解説いただき、歯科と栄養の連携を強化する必要性を述べられました。
安藤雄一先生(国立保健医療科学院・口腔保健部)のご講演「産業保健における公衆栄養で口腔保健が果たす役割とは」では、国民健康・栄養調査から、口腔状態・咀嚼と栄養摂取の関連や、メタボリック・シンドロームと現在歯数の関連、早食いと肥満の関連を解説いただきました。
指定発言では、中村美詠子先生(パナソニック電工電路株式会社健康管理室・浜松医科大学健康社会医学講座)が「健康的な食生活と消化器系との密接な関連」と題し、 産業医の立場から、ご自身の体験を織り交ぜながら今回のフォーラムの要点をまとめていただき今後の協業の課題等もご発言いただきました。
会場からは、栄養指導のなかでどのように口腔保健指導のアプローチをすすめていけるか、そのための簡易なスクリーニング方法が確立されているのかといった質問や、歯の本数が少なくなり、咬めなくなってしまった人へはどのような食事指導をすればよいかといった実践的な質疑応答もあり、予定時間ぎりぎりまで活発な論議が行われました。
口腔機能の維持と栄養保持は、あらゆる健康に関連すると考えられ、今後、歯科部門と栄養部門と連携しあらたな展開が広がっていくことが期待されるフォーラムでした。
(報告者:日本アイ・ビー・エム 加藤 元) |