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2009年8月10日
第82回日本産業衛生学会総会 産業歯科保健フォーラム報告


5月22日福岡での本学会産業歯科保健部会主催によるフォーラムがもたれました (参加約70名) 。今年は「産業歯科保健のゆるやかな再構築のために」がテーマでした。

このねらいは歯科医師の多くが産業保健に興味を持ち,またその公的資格である労働衛生コンサルタントを有したとしても,参画する活路を見出しにくい現実をどうみるか,打開の考え方の整理をするための企画でした。また現実の産業歯科保健活動を推進するための人材育成の方策も討論の対象としました。結論付けるのではなくこれらの目的をさまざまな立場から深めていくという意味で「・・・ゆるやかな再構築・・・」の意図がありました。この意図を井手玲子先生がまずキーノートとして解説されました。

次にシンポ形式をとり,最初の河野慶三先生(富士ゼロックス)には企業での保健活動は現在「リスク管理」を中心に進んでいる,このコンセンサスに歯科保健が適応するかどうかが問われているという主旨の意見を話されました。メンタルヘルスを例に取り上げ,発生した健康事象に「事例性」があるかどうか,歯科保健はどうか,といった側面からの問題提起で,ある意味で私たちの弱いところをあらためて指摘していただきました。

城戸尚治先生(城戸産業医事務所)は産業医としてのご経験を踏まえて,産業保健に歯科保健を取り上げる際の視点を提示されました。その基本は健康に資する

歯科保健の役割を今以上に科学的に示してほしい,産業医が推進しやすいような問診を提案してほしい,そしてより実現可能性の高い提案をすべき,とのご意見でした。

今里憲弘先生(福岡県歯科医師会地域保健部)からは福岡県歯科医師会で行ってきた産業歯科保健の研修の成果についてお話されました。とくに産業歯科保健を担う人材の育成を狙った活動に力を入れた結果,単なる歯科健診にとどまらない新しい産業歯科保健活動の展望を垣間見ることができました。

引き続き,コメントリレーの最初として広瀬敏雄先生(宮城)から産業医部会長の立場も踏まえて産業医部会と産業歯科保健部会との密な連携を提案されました。

金山敏治先生(愛知)から地域での看護職から見た産業歯科医のイメージを作ることについてお話がありました。

品田佳世子先生(東京医科歯科大学)からは大学教育での産業歯科保健教育の現状に関してその問題点を挙げられました。

最後に山本良子先生(日本予防医学協会九州センター)が労働衛生機関のスタッフの立場から産業歯科保健の適正な情報発信の重要性についてお話がありました。

全体討論では以下のようなことが討論されました.歯科医師が産業医と協働してできる内容は何なのかということに関して河野先生からは職場巡視は産業医の職務となっているので無理があるが,労働衛生コンサルタントなら協働はできるのではないか,との意見がありました。

また河野,城戸両先生から「リスク」という言葉が数回出てきたので,座長からこの場合のリスクとは健康リスクではなく経営リスクをさして言っているのか,との質問にたいして両先生ともその意味であるとの回答でした。リスクという言葉の定義が異なるのも産業保健分野の特長とも言え,ある意味でキーワードであろうと考えられました。

座長である東敏昭先生(産業医科大学教授)から歯科が病気の指標ではなく健康指標として意義があるとの研究成果も出てきつつあるのでその方面をもっと追求してほしいとのコメントがありました。

全体として 歯科サイドの独りよがりではなく,抑制の効いたよいシンポであったと思われました。
(文責 藤田雄三)

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